ゲーム制作の失敗談①違法ゲームの開発を止めろ!

ゲーム制作

乙女ゲーム制作をお手伝い!プロデューサーは「ゲームをしない人」?

前回の記事で、辞令によってカードゲームの営業からゲームの企画へ異動になったことはお話ししました。そこで今回は私が関わった3つの大失敗企画のうち、ひとつ(女性向けスマートフォンゲーム)についてお話しします(残り2つもいずれお話しします)。

まず今回お話しする企画ですが、関わることになった経緯はこんな感じです。
・私がゲーム開発部署へ異動になるよりも前に動き始めたゲーム企画で、制作発表まで行われていた
・世界観はできていたものの、ゲーム部分の開発が難航していた
・まずは私の上司がヘルプで入り、それでも手が足りず私が参加することになった
とまあ、経緯だけ見ても「ダメそう」というのはなんとなく察していただけたと思います。

さてそんな企画ですが、どういう内容だったかというと「お店経営ゲーム+乙女ゲーム」というつくりのスマートフォン向けゲームでした。お店に商品を並べて、そこにお客さんとしてやってきたイケメンと仲良くなることを目指すゲームです。これだけ聞くと普通なのですが、この企画の何がダメだったのでしょうか。その理由を推理していきます。
①企画の発案者(兼ディレクター)が、ゲームをほとんど遊ばない
ディレクター(前回の記事に出たAさん)自身がゲームを遊ばないがゆえに、ゲームとしてどこが面白いのかという軸を自分の中に持っていませんでした。なぜこの企画に予算が降りたのか、今でもわかりません。
②ディレクター自身、ゲームのディレクションが初めてでやるべきことをわかっていない
仕事にはやるべきことの順序や優先度があります。それはゲーム開発においても同じです。コンセプトを決め、スケジュールを立て、どこまでに自分や他人が何をするべきか判断して実行しなければなりません。しかしこの企画のディレクターはプロモーション施策の実施にのみ力を入れて、肝心のゲーム部分については開発会社に丸投げの状態でした。
つまり、ディレクターとしての自分の役割を理解も実施もできていなかったのです。
③ゲームシステムが違法
皆さんはスマートフォンゲームにおいて「コンプガチャ」というものをご存知でしょうか。大雑把に説明すると「有料のガチャから手に入るアイテムを複数揃えないと、できないことや手に入らないアイテムがある」というものです。この企画はゲーム体験の面白さを担う要素がこのコンプガチャ問題に抵触しており、どうやってユーザーにゲーム体験を提供するのかというところが考えられていませんでした。これもディレクターがゲームを遊ばないために、この問題を知らなかったのが影響していたのでしょう。

以上を見れば分かる通り、こんな状態ではとてもリリースすることはできませんよね。
さて、それではこのプロジェクトに私がどう関わったのか、そしてこのプロジェクトの結果はどうなったのでしょうか。

振り回されるプロジェクトメンバー、そして運命の時

すでにお伝えしている通り、この企画に私が関わる頃には制作発表が行われていました。
なのでゲーム部分が何もできていないプロジェクトをいかに立て直し、リリースするかが急務でした。
そこで私とマネージャーは下のような形で仕事をしていました。
マネージャー
・ゲーム関連のコンサルティング会社をプロジェクトに入れて、ゲーム部分の見直しを図る
・プロモーション施策の手伝い
みねぞう
・すでに出来上がっているイラスト素材の管理ツール作成など、ゲーム運用開始後の準備を行う
・プロモーション施策の手伝い
業務内容に「プロモーション施策の手伝い」が含まれている通り、Aさんのプロモーション施策傾注は止まりません。私やマネージャーも、プロモーション施策のために動画撮影のアシスタントやプロモーションイベントの人員に駆り出されていました。またゲームの開発に関しては「私はゲームに詳しくないのでコンサルティング会社さんにお任せします」という態度でほとんど考えておらず、コンサルティング会社も開発会社も困らせていました。
ちなみに付け加えると、この当時私もマネージャーもデジタルのゲームに関わるのは初めてでした。つまり自社内のプロジェクトメンバーが全員素人だったわけですね。

さあ、こんな感じで進んでいた(?)プロジェクトがどうなったかというと、「制作中止の発表をする」という結末を迎えます。
何が悪かったのかを私なりにまとめてみました。
・社内にゲーム制作のノウハウが全くなかった
ディレクターやマネージャー、そして私も含め社内の人員が全員ゲーム開発の素人だったことからも、これは間違いありません。ゲーム自体は何本かリリースしている会社なのですが、おそらく今までも開発会社任せだったのでしょう。別の記事でもお話ししますが、他のゲーム開発プロジェクトでもここが問題になって失敗します。
・企画内容の精査を、決済者(役員など)ができていなかった
そもそも今回の企画は面白いのか?ということを考える際に、Aさんは社歴が長いから大丈夫だというバイアスがかかっていたのではないでしょうか。もしくは新しいコンテンツを打ち立てなければならないという思いから、妥協して企画を通してしまったという可能性もあります。
・企画をスタートする際に、ひとりに任せっきりにしてしまった
ノウハウの話にも関係してきますが、ゲームのディレクター経験がない人ひとりに任せてしまう、社内の体制も問題だったと思います。ゲーム開発に詳しく、意見のできる人がいればここまで悲惨なことにならなかったかもしれません。
・やるべきことの優先順位を間違えていた
ディレクターのAさんはプロモーション施策にとても力を入れていました。しかし開発の進捗状況を考えれば、優先するべきはプロモーション施策を打つことではなく、ゲームの中身を作ることです。そこを間違えたことで、自分の手に負えなくなりゲームの中身が人任せになるという事態を招きました。

ここまで読んでくださった方は「失敗するのは当たり前だろ!」と思うかもしれませんが、騒動の中にいると自分たちでは案外気づかないものですね。お恥ずかしい限りですが。

こんな感じで、私が体験した失敗プロジェクトの話は今後もお話しできればと思います。ですので今後ゲームを作られる方は、私の体験談を教訓にしていただけると記事にした甲斐があります。

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