ゲーム制作の失敗談②-2,「運用」に対する見込みの甘さが露呈・・・

ゲーム制作

ゲームの運用開始!次から次へと湧いてくる課題

前回の記事で、自社タイトルカードゲームのキャラクターを活用したスマートフォン向けゲームの制作に関わったということをお話ししました。今回はそのゲームがリリースされた後、つまり運用していく段階のお話です。前回の記事の続きですので、まだ読んでいない方は先に前回の記事を読んでいただけると嬉しいです。

それでは本題に入ります。前回お伝えした通り、多くの問題を抱えた状態で私たちの制作したゲームはリリースされました。リリース前から問題だらけだったのですから、リリース後の運用はさらに多くの問題を抱えます。大きく分けると、以下の3つに分類されます。
①報酬と成長、ストレスのバランス
②ユーザーサポート体制
③運用コストの見積もり

それでは、順番に解説していきます。

リリース後の問題①報酬と成長、ストレスのバランス

スマートフォンゲームのRPGを遊んだことのある方はわかると思いますが、多くのゲームでの一般的なサイクルは
ステージに挑む

クリアして報酬をもらう

報酬でキャラクター強化や新キャラクターを手に入れる

強化したキャラクターや新キャラクターで次のステージに挑む
ということを繰り返します。
これを繰り返しながら、徐々に敵を強く(=ユーザーへのストレスを大きく)していきます。
長く続いているゲームは、このサイクルがきれいに回っています。
毎日遊んでもらうことで適度に成長を感じ、ゲームのプレイサイクルをなじませることができればOKです。
しかし私たちの作っていたゲームはキャラクターの育成難易度の高さに報酬が見合っておらず、このサイクルが回っていませんでした。そのためかなり早い段階でキャラクターの育成ができなくなり、ステージ攻略もままならない事態に陥ってしまうのです。
キャラクターが育成できず、成長や進捗が実感できない状況になってしまうと、スマートフォンゲームの場合はすぐにお客さんが離れてしまいます。
特にキャラクター育成の問題は、さらに色々なところに影響していました。例を挙げると、
・ユーザーのキャラクター育成状況を考えていない高難易度コンテンツの追加により、初開催時の攻略達成者ゼロ
・時間をかけることでしか進捗しない育成要素が、キャラクターの能力成長に大きく関わる
特に攻略達成者ゼロの高難易度コンテンツを追加した際に、開発会社のプランナーが愉快そうな顔で「誰も攻略できませんでしたね〜、ハハハ!」といった時は血管が切れそうになりました。クリアできないゲームなんて、ただの理不尽であって全く面白くないということがわかっていないのか!「ダイの大冒険」でフレイザードさんも言ってたじゃないか、「オレは戦うのが好きなんじゃねぇんだ…勝つのが好きなんだよォォッ!!!」って。スマホゲームは案外これが真理で、「勝てるゲーム」というのは非常に大事です。
スマートフォンゲームはとにかくまずGiveすることを考えましょう。ユーザーに色々なものを与えて、好きになってもらうのが大事です。回収のことばかり考えるのは、お客さんに見透かされます。

この問題に対してはキャラクター育成の元々の設定が変えられなかったため、対症療法的な対策しかできず「とにかく期間限定イベントで大量の育成アイテムをプレゼントする」という方法しか取れませんでした。

リリース後の問題②ユーザーサポート体制

これは、ゲームの中身と同じぐらい大事です。不慮のトラブルによる全体的な緊急対応はもとより、ユーザーごとにさまざまなトラブルが日々起きます。それらに対してヒアリングや解決策の考案を行うのがユーザーサポートです。サポートの対応が悪いと、これもユーザーの離脱につながります。
ここに来るお客さんの問い合わせの多くは、下の4つに分けられます。
・機種変更によるゲームデータ引き継ぎ失敗への、救済措置希望
・ガチャが当たらないことへの不満(最高レアが当たらない/欲しいキャラが当たらない)
・有償アイテム購入時の決済トラブル
・その他ゲーム内容への不満

有償アイテムの購入に関わるトラブルは、お金が絡んでくることなので開発会社も手早く対応してくれます。ガチャに関しては、確率の話なのでどうにもできません。最高レアの当たる確率を上げる、特定のキャラのピックアップ率を上げる、ステップアップガチャ(ガチャを回すたびに当たりが出やすくなったりおまけがついてくるガチャ)を行うのが限界です。
私が頭を悩ませたのは「機種変更によるゲームデータ引き継ぎ失敗への、救済措置希望」です。売上に直接関わらないからなのか、問い合わせ受付からの対応が遅く、放置されがちでした。これは私の反省でもあるのですが、開発会社へリマインドを徹底しすぐに調査と対応を行うように指示するべきでした。これにより不利益を被ったお客さんに対しては、本当に申し訳ないことをしたと思っています。

リリース後の問題③運用コストの見積もり

これは、新規要素の追加にどのぐらいの工数(誰が、何日かけて作業を行わなくてはいけないのかということ)がかかるのかを運用開始前に見積もっていなかったという話と、コンテンツ資産の消費ペースに関わる話です。

まず工数の話です。ゲームを運用する以上、定期的に新キャラクターを追加する必要があります。特にこのゲームでは「元のイラストからデフォルメキャラクターを作る」という作業が発生するので、新キャラクターを作るためにはデザイン作業など多くの作業が必要になります。ここに関してはある程度作業ペースも折り込み済みでした。しかしこのゲームでは、一部のキャラクターに「元のイラストを加工し、動きをつける」という作業が必要でした。なぜこんなことになったかというと、ゲームの開発中に開発会社から動きをつけることへの提案があり、それに対して取締役とマネージャーが工数の見込みも聞かずにGOサインを出してしまったことに由来します。そしていざ運用開始後に動きのあるキャラクターを追加しようという話が出てきた際に、1ヶ月半の日数がかかることが発覚したのです。つまり、毎月追加していくことはできないわけですね。スマートフォンゲームの運用を考えている人は「毎月何がどのくらいの期間で作成できるか」というのを、必ず運用開始前に見直しましょう。

次にコンテンツ資産消費のペースについてです。再びキャラクター追加の話ですが、このゲームは1キャラクターを追加する際に、元のカードゲームのイラストを2枚必要とします。いわゆる「進化前/進化後」のイラスト変化をつけるためです。つまり、元のカードゲームで2枚以上のイラストがあるキャラクターしか追加できないのです。しかも運用する中で追加していくとなると、ガチャの目玉商品になるような人気キャラクターでなければなりません。そうなると使えるイラストやキャラクターは限られてきます。追加キャラクターの選定は私の担当だったので、これにはかなり頭を悩ませました。カードゲームの開発担当に無理を言って、まだカードに使用する前のイラストをアプリのゲームに使わせてもらうぐらいには困っていました。「豊富なイラスト資産を活用するんだ!」と息巻いていた上層部にビンタを喰らわせたかったです。ホントに。

反省点

スマートフォンゲームというのは、長くお客さんに遊び続けてもらうことが大事です。
なのでお客さんが遊びやすい環境を整えることや、お客さんに新しい価値を提供し続けていく仕組みを念頭に置いて開発をスタートしなければなりません。
当時の私たちに足りなかったのは、先々のことを見据えながら運用できる体制を作るという視点でした。もし皆さんの中で今後スマートフォンゲームを作る方がいましたら、この記事で私が書いたことを頭の片隅に置いておいてください。必ず役に立つはずです。

ぶっちゃけた話

そもそもあのカードゲームのファン数(Twitterフォロワーが約2万人)で、スマートフォンゲームを作ろうとしたのが間違いだったと思います。事前登録も目標の10万人に達していなかったですし。つまり企画の時点で破綻していたと言えるでしょう。
既存コンテンツをゲーム化させる場合、お客さんの数はある程度見えています。そのお客さんの数でゲームとして販売あるいは運用する場合に、開発コストや運用コストに見合うリターンが得られるかということを考えて、企画を進めることが可能なのか判断するというのが大事だというのが、この企画で得た学びです。
結局このゲームはリリースから1年も経たずにサービスを終了するわけですが、それについては次回の記事でお話しします。

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